6月14日 資本論初心者は一文につまづく! [資本論番外編]

 今日は午後から、世田谷山友会のホームページを更新していました。大分間が開いてしまったので、山行一覧をまとめるのは大変でした。
 先日書いたように総会を終えましたが、今年はまた一段と、会は発展しそうです。積極的な山行が今年も出てきています。但し、現在会員の平均年齢は50代前半、10年後を見据えると、若い方に(40代でも若いのです)入って貰いたいものです。

 さて一仕事終えたあとで、資本論番外編を書きます。

 資本論初心者の私にとって、マルクスの文章一文、一文は、それを理解しようと苦しみ、つまずきつつ進まざるを得ない、というのが実状です。勿論、理解し易い箇所と共に。マルクス一流のユーモアや、皮肉に満ちた注釈を楽しむ、ということもあるので続けられるのですが。
 ところが、どうにもわからず、時間をかけて考えさせられる文章も多いのです。今日はそんな話題を書いてみます。

 現在、資本論読解の続きを書こうと、b価値形態の量的規定性の次、3の等価形態を読み進めている所です。そこで出会ったのが、次の文章です。
新日本出版社版、95頁16行目「この比率は、リンネルの価値の大きさが与えられているのだから、上着の価値の大きさで決まる。」
 この文章を読んで、私は「えっ! 与えられているとはどういう事?」と、はたと立ち止まってしまったのでした。比率というからには、リンネル(相対的価値形態)と上着(等価形態)の価値量の比較であり、それはそれら商品毎の単位で表れるはずです。だからリンネル(相対的価値形態)が、あたかも上着(等価形態)に対し、優位性をもって、その価値が与えられている。というのはおかしい、と思ったのです。
 この文章は、3 等価形態に出てくると先に述べました。ここでマルクスはそれまでの考察を簡単に振り返った後、次のような文章で、この項を起こしています。
(95ー13)「ある一種類の商品、たとえば上着が、別の種類の商品、たとえばリンネルの等価物として役立ち、、それゆえ、上着が、リンネルと直接交換されうる形態にあるという属性を受け取るとしても、それによって、上着とリンネルが交換されうる比率が与えられるわけでは決してない。」
として先の問題の文章に続いています。その後、この「与えられている」をめぐって、色々考えることになりました。ドイツ語原文はどうなっているのだろうとは思いましたが、ドイツ語は分かりません。代わりに英訳はどうか、と思いネット検索して見たところ、ありました。次の通り。
 The value of the linen being given in magnitude, that proportion depends on the value of the coat.
 見られる通り、英訳も’being given in magnitude'ですから、「大きさは与えられている」でした。又、宮川實先生訳、宮川彰先生監修の「学習判資本論」では、驚いたことに、「この比率は、リンネルの価値が与えられている場合には、」になっているではないですか?? この方が、確かに私の疑問に答えてくれるとは思いました。しかし、これでは私の疑問は簡単には収まりません。その後も、この文章の理解を巡って試行錯誤が続きました。途中経過はすっかり忘れてしまいましたが、現在では次のような理解に達する事が出来ました。
 つまり、このA簡単な価値形態で述べられてきた、その前提、諸商品は自分の価値を表現したい衝動をもって、お互いに対峙している状態にあります。運良く’等価形態’を見いだして、自らを’相対的価値形態’とすることが出来た商品は、当然、使用価値としての単位(エレ等)と共に、抽象的人間労働としての価値の凝固物としてあること、すなわち初めから「価値は与えられている」のだ、ということだったのです。

 気付いてみれば、簡単なことでした。おそらくマルクスも、初心者がつまづくとは全く思わず、すらすらと書いたものと思います。日本語訳としては新日本出版社版が、正しいと思います。しかしもう一方で学習版資本論の訳も、宮川先生は「ここでつまづく」と思われたのでしょうか、細かい所までの心遣いを感じた次第です。

 資本論は難しいと言われます。それは論理を追うことの難しさと共に、読み方を身につけるまでの難しさがあるように思います。マルクスが一生をかけて彫琢した、その文章を味わえるようになるまで、疑問を与えられることも楽しみの一部にしたいものです。

 マルクスは言っているかも知れません。「学問の道に大道はないけれど、’登れるかも知れないよ?’」と。


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