2月26日 デヴィッド・ハーヴェイ教授の「新自由主義」を読んでいて [映画]

 銭湯の帰りに一杯やりながら、デヴィッド・ハーヴェイ教授の「新自由主義」を読みました。読書の中心は資本論だから、この本を開くのは久しぶりです。専門的なこともあり、又翻訳書にありがちな分かりにくさがあり、ゆっくりと読んでいるのです。第二章の同意形成のところ、アメリカに続いてイギリスの場合の新自由主義の導入のため、国民の中にどのようにしてその同意を形成したか、という歴史的な叙述です。

 サッチャー首相の時代、イギリスでは石炭産業は国営だったのですね。同意形成の歴史の中でサッチャーの炭鉱労働組合つぶしの話が出てきました。そこで1996年のイギリス映画「ブラス」を思い出したのです。炭鉱の閉鎖でゆれる小さな町で、戦う労働組合、高額の退職金を提示されて心がゆれる者、そうした苦悩と緊張が漂う町のなかで活動する炭鉱労働者で作るブラスバンドの話です。当時の貸しビデオ店で人気のビデオで中々借りることが出来ませんでした。音楽と生きることの素晴らしさ、そのほろ苦さを含めて描いた秀作です。ちなみに映画で音楽を担当したのは実際の炭鉱労働者バンド「グライムソープ・コリアリー・バンド」で、ブラスバンドって、こんなに素敵だったのか? と思わせてくれます。例えばギターの曲で有名なアランフェス・コンチェルトが素晴らしい。この場面、今でもYoutubeで見ることが出来ます。尚、このバンドのホームページもあります。勿論英語ですけど。

 

 もう一つ、ハーヴェイ教授の本には、「国際競争は1980年代に多くの伝統的なイギリス産業を破壊した。シェフィールドの鉄鋼産業・・・」とあります。このシェフィールドの元鉄鋼労働者、今失業者を登場人物として、1997年に「フルモンティ」が製作されています。こちらは大分羽目をはずした映画で、デブ、老人、やせっぽち(失礼、差別用語かな?)など殆ど舞台には立てない面々が、金儲けをしようと(本当はもっと切実な問題なのですが)男性ストリップショーたくらむというお話。それぞれ妻には秘密に練習に励むのです。そのメンバーの中には、面子から妻に首を切られたことを言い出せないまま、職安通いをしている元管理職がいますが、身につまされるお話です。
 どちらの映画も、主人公たちはそれぞれ複雑な背景を持ちながら、破綻の危機を乗り越え団結していきます。又回りの人々の役割も秀逸、特に「フルモンティ」では主人公の息子が面白い。最後の最後で主人公の父親がびびっているのに業を煮やし「行ってこいよ! 男だろ」なんて言うんですから。両映画とも、最後は観客の拍手に包まれるのです。「ブラス」はロイヤル・アルバート・ホール、「フルモンティ」は町の小さな劇場で。 「ブラス」は泣けます。ですからタオルを持って、「フルモンティ」も泣けます。こちらは笑い泣きになります。

 アー! 映画ってホントに良いですね! それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ


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