3月17日 サラの鍵 [映画]

 今日は久しぶりに心を揺さぶられる映画を見ました。第二次大戦中のフランスを背景にした映画です。戦争映画のジャンルに入るのでしょうか? しかし戦闘場面は一切ありません。戦争に翻弄される一般庶民、とくにユダヤ人の悲惨を描いたものです。この「サラの鍵」は、ある朝、強制収容所に連行されるユダヤ人一家から始まります。ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件として知られる、フランス警察が自国民であるユダヤ系フランス人をパリの競輪場に大量留置し、次々とナチスの強制収容所に送った事件です。大戦後、フランス政府は、事件当時のヴィシー政権をドイツの傀儡として、一切責任を認めませんでした。

 この事件を全面的に扱った映画に「黄色い星の子供たち」(2010年)があります。ジャン・レノ、メラニー・ロラン出演の映画で、日を改めて紹介できれば、と思います。さて「サラの鍵」(2010年)です。2006年発表の小説に基いており、フィクションと言えるでしょう。

 ジュリアはアメリカ人ジャーナリスト、フランス人と結婚し、パリで生活しています。夫の祖父母から譲りうけたパリのアパートを改装中です。そこで大戦中にそのアパートに住んでいたユダヤ人家族が、先の大量検挙事件で逮捕されていた事を知ります。その家族に興味をもったジュリアは家族がどうなったか調査を始めます。

 そのジュリアの行動と、ユダヤ人一家の運命、一家の娘のサラの脱走後の運命が映画では交錯して描かれます。妊娠したにも関わらず、中絶を夫に迫られるジュリアでしたが、悩みながらも諦めずに調査を進めていきます。対してサラの方は一つの鍵を大事に持ち、必死の逃避行をします。途中哀れに思った農民夫婦に助けられ、鍵を持ってかつてのアパートに向かうのでした。そして持っていた鍵で扉を開けたサラがそこで見たものは??

 戦後、サラがどうなったか、先の農民夫婦と暮らしますが!! ジュリアの執念の追跡も続きます。サラがアパートにたどり着いたとき、そのアパートに住んでいた子供がジュリアの義理の父でした。そして??

 この映画を見て、私も如何に戦争を知らないかを思い知らされました。サラが受けた心の傷、調べるほどに傷ついていくジュリア、そして夫に反対され、また高齢にも関わらず出産するジュリア。人間が生きるとはどういう事かを深く教えてくれる映画です。

 最後のシーン、かつて「過去をほじくり返すのは止めろ」と言ったサラの息子ウィリアムが、ジュリアを訪ねてきます。父から全てを聞いて、ジュリアに謝罪と礼を言うためでしょう。既にジュリアは娘を生んでいましたが、ウィリアムが名前を聞きます。少しの間があって、ジュリアがおずおずと答えます。「サラ」と。

 ジュリアを演じたのは、「イングリッシュ・ペイシェント」「モンタナの風に吹かれて」のクリスティン・スコット=トーマス。フランス語が堪能なイギリス出身の女優、知的で美しい方です。


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